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研究員コラム

日本スポーツマネジメント学会セミナー傍聴記

2008.10.28 10:53 AM | 投稿者:中川直樹

10月11日の土曜日に、日本スポーツマネジメント学会第4回セミナーに参加した。『日本のスポーツはどこへ向かうのか?』をテーマに、3名の講師が登壇された。

北京五輪の総括1:
スポーツビジネスの立場からは、ミズノ株式会社専務取締役 上治丈太郎氏が講演された。

今、国内市場13億人とも14億人とも言われる中国向けのビジネスは、どの企業にとっても非常に魅力的であるので、各市場の争奪をめぐっての競合 が激しさを増している。スポーツメーカーも例外ではなく、日本メーカーはWorldwideメーカーをはじめ中国メーカーとのしのぎの削り合いを繰広げて おり、決して楽観視できる状況ではない。

上治氏は、スポーツメーカーにとって最大のブランド訴求の場であるオリンピックでのビジネス戦略について、今年行われた北京五輪での実例を挙げ、 分かりやすく解説されていた。また、水着問題に揺れた日本競泳選手団であったが、この問題の真相はFINA(国際水泳連盟)が07年11月に突然の競技規 則の改定を行ったことに端を発した、情報収集戦の出遅れの結果であったとの報告をされていたのが印象的な記憶として残っている。

北京五輪の総括2:
スポーツジャーナリストの立場からは、北京五輪に日本選手団のプレスアタッシェとして参加された、JOC事業・広報専門委員 竹内浩氏が講演された。

204カ国から11,193人の選手が参加して開催された北京五輪に、中国政府は推定で4兆700億円もの資金を投入した。こうした背景には、中 国政府が北京五輪を通じて国際社会に向けて経済立国として、更には高い政治能力を有する中国をアピールする機会としたい思惑があった。そこで、今回の北京 五輪を国威発揚型と呼ぶ人もいる。

竹内氏は、恐らく中国史上最多となる一時の外国人入国者に対して、最大の配慮がなされた五輪であったことを報告された。外国人プレスへの対応や選 手村の施設、選手輸送などのロジスティクス、セキュリティなどについて、中国の特長である人海戦術を駆使して高いクオリティにて対応できていたことを、数 多くの五輪現場を体験された立場から語っておられた。反対に、中国メディア陣に自由報道の経験不足からか、空港などの場面で混乱が見受けられたことも興味 深く伺えた。

引き続き行われたスポーツ立国調査会報告は、自由民主党スポーツ立国調査会事務局長の遠藤利明氏が講演された。

スポーツビジネスやスポーツ立国としての国際社会へのアピールなど、かつて日本の独壇場であった分野への中国への台頭は目覚しい。特に、北京五輪 における中国勢の金メダル51個をはじめとするアメリカをもしのぐメダルラッシュは、世界の注目を浴びた。この状況は日本にとって、非常に脅威である。

遠藤氏は、 「スポーツ立国日本」(原文のまま)へ向けて -国家戦略としてのトップスポーツ- というテーマで講演された。氏は、国際社会における真の先進国「日本」の国力とプレゼンスを高めるためにも、スポー ツ人の社会的評価を高め、トップアスリート・スタッフの社会的保障などの課題を解決するための国策が必要であることを力説されていた。そして、この中には 「新スポーツ振興法」の制定や「スポーツ省(庁)」の設置という提案も含まれている。

話は戻るが、前出の竹内氏の話の中で、北京五輪では国家戦略として、38人の外国人コーチを雇い、文化的背景を全く無視して養成されたアスリート がメダルを獲得した競技がいくつかあったことを報告し、果たしてこのメダル獲得をいったいどれだけの中国人が喜んだのだろうかと訴えておられた。氏はこう も続けた。メダルの確保はスポーツ振興の意味である一定数は必要だ。しかし五輪には、メダルの獲得数以上に、スポーツを通じたコミュニティの形成と、ス ポーツの裾野の広がりへの貢献がもっと期待出来るのではないか。日本の北島や谷本などはその良い例ではないかと。

一瞬、遠藤氏と竹内氏の主張は対立するかのように思える。しかし、スポーツを捉える視点や次元が違うだけであって、どちらが正当な主張といった類 の問題ではない。どちらもスポーツ文化の発展にとっては必要な課題であろう。そして、この辺りに、スポーツマネジメントが貢献できる課題が隠されているよ うである。つまり、国家レベルと地域レベル、企業と学校、更にはナショナルアスリートとそれ以外のエリートアスリートのサポートなど、様々な次元で繰広げ られるスポーツ文化発展に向けての活動を、連続体として関連付けていくためのマネジメントがこれからは必要とされていくのではないか。

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