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調査レポートメディア影響調査で探るビーチバレーの可能性

2012.06.30 03:38 AM | 投稿者:小野田哲弥

2011vol.4-onoda01-thumb-306x301-210 2011年の日本スポーツ界は、サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」のFIFA女子ワールドカップ(W杯)優勝の話題で持ちきりであった。本稿では、その快挙がもたらした意識変化を実証的に探るとともに、これまでも特定スポーツのブームに火をつけてきた「メディアコンテンツ」の影響について、進捗中の調査結果を報告する。なお本文は「ビーチバレー普及の観点から」を川合が、それ以外を小野田が執筆した。

女子サッカー人口が今後拡大!?
本研究所では、2011年の2月と9月に、それぞれ全国の男女1万人を対象としたインターネット調査を実施した※1。なでしこジャパンのW杯優勝は2011年7月17日(日本時間7月18日早朝)であるため、両調査結果を比較することで、なでしこフィーバーが与えた影響を実測することができる。

娘にさせたいスポーツ「サッカー」が急浮上
両調査で調査対象が共通する20代・30代サンプルのデータを抽出して集計したところ、【女の子にさせたいスポーツ】質問に対する「サッカー」の順位に顕著な違いが見られた※2。表1はその上位25種目の変動を示したものである。女性(母親想定層)における「サッカー」は順位も低く有意な増加は見られなかったが、男性(父親想定層)では、2月の5.4%から9月の12.1%へと、2倍以上に跳ね上がったことが確かめられる。

 

男性サッカー経験者においてより顕著
2011vol.4-onoda02-thumb-304x243-2132011vol.4-onoda02.jpg 「女の子にサッカーをさせたい」と考える男性(父親想定層)のスポーツキャリアを探ったところ、学生時代にサッカー部に所属、あるいは現在サッカーやフットサルを行っている属性が強く働いていることが判明した※3。つまり、なでしこフィーバーは、特に男性サッカー経験者に対して、娘にサッカーをさせたい大きな動機付けになったといえる。表2は、男性サッカー経験者に限定した場合の「女の子にさせたいスポーツ」トップ10の変化である※4。2月時点でも一般男性よりは高く8.4%を記録しているが、9月では2.5倍以上の21.1%へと大幅に増加していることがわかる。以上から、これまではたとえ自身がサッカー経験者であっても積極的に娘にサッカーをさせたいと考える男性は10人に1人にも満たなかったが、2011年の夏を機に5人に1人以上にまで激増したといえる。もちろん実際に娘にサッカーをさせたかどうかの検証はこれからだが、少なくとも意識変化の面において、いかになでしこジャパンのW杯優勝がエポックメイキングな出来事であったかが理解できる。

スラムダンク効果は本当か?
2011vol.4-onoda03-thumb-304x416-216 2011年9月に実施した調査では、昨年度の「ゲートウェイ・マイニング」(何がスポーツを始める際の”きっかけ”となったか)を拡張し、スポーツ関連のメディアコンテンツ(情報バラエティ番組・映画・ドラマ・漫画/アニメ・ゲーム等)とスポーツキャリアとの関連性について探った※5。世代を20代・30代・40代に分けて以下に検証結果を報告する。

男女ともに漫画/アニメの影響は絶大
スポーツ活動経験は全世代において中学時代に最大値を示すため、スポーツキャリアは中学時の所属運動部に限定し、関連を検証するスポーツ関連メディアも回答率20%以上の主要コンテンツに限定して、その特化係数(両者の重複率は通常の重複率の何倍か)のトップ5を世代別に掲載した。男性の結果が表3、女性の結果が表4である。男性はもともとスポーツ好きの割合が高いことも影響し、漫画/アニメのみならず、情報バラエティ番組・海外映画・ゲームなどにも強い関連性を示すコンテンツが存在した。他方、女性における主要コンテンツは漫画/アニメに限られ、種目が合致しないケースも散見される。しかし、40代の『アタックNo.1』と『エースをねらえ!』、30代の『SLAM DUNK』、20代の『テニスの王子様』など、最上位のコンテンツと部活動経験との間には、同一種目間の密接な連動性が確認できた。

今後の調査課題
今回の調査では、いわゆる「鶏が先か、卵が先か」の前後関係までは把握できていない。ゆえに例えば表3における『SLAM DUNK』に関して、男性20代では漫画/アニメが「バスケットボール」の経験に影響を与えた可能性が高いが、男性40代については『週刊少年ジャンプ』での連載開始時(1990)、高校生以上(19~28歳)であったことから、中学時代に「バスケットボール」部に所属していた男性が、あとから当該コンテンツに接したと考えるのが自然である。次回行う調査では、特定のメディアコンテンツがスポーツを始めた直接的なきっかけとなったかについても実証できるよう設計したい。
表5は、回答率は低いものの、通常の3倍を超える極めて強固な関連性を示したメディアとスポーツキャリアの組み合わせの一例である。現代は、かつての『巨人の星』や『あしたのジョー』のようなメガヒットコンテンツが生まれにくいメディア環境にあるといわれるが、表3においても若い世代ほど特化係数の高いケースが目立っているように、”かゆい所に手が届く”コアターゲットを狙ったコンテンツの進化も著しい。上述の時系列把握に加え、今後はそのような多様性にもアプローチし、スポーツ振興の可能性を探っていきたい。

ビーチバレー普及の観点から
バレーボール関係者はよく冗談交じりで「『アタックNo.1』のおかげで昔はバレーが流行ったが、最近は『SLAM DUNK』のせいで有望な選手がバスケに流れてしまう」と嘆いたりするが、あながち間違った話ではないことが裏付けられる結果であった。しかし、以前バレーボール人口が多かったのは、漫画やアニメの影響だけでなく、全日本バレーボールチームが国際的に強く、オリンピックでも金メダルを狙える位置にあったことが根底にある。そのような”強いスポーツ”は人々の共感を呼び、子供たちの憧れとなる。その点とまさに通底するのが昨年のなでしこジャパンのワールドカップ優勝であり、娘にサッカーをさせたい父親が増える要因となったことも大いに納得できる。また、小学生のスポーツ参加は親が関わらないと難しく、昨今ではフルタイムで働く女性も一般的なため、育児をする父親(イクメン)が増え、息子とだけでなく娘とも一緒にスポーツを楽しむ未来が訪れることが望ましい。特にサッカーは、日本サッカー協会が推進してきた『Jリーグ百年構想』の下、男性はすでに競技人口が多く、女子も小学生ならば男子に交じってサッカー部にも参加できるため、なでしこブームが一過性に終わらないだけの土壌が築かれている。ビーチバレーも長期的視野に立ち、ブームが訪れた際に対応しうる環境づくりを着実に進めなければならない。現在その一環として日本バレーボール協会と日本ビーチバレー連盟で進めているのが、国民体育大会(国体)で廃止された9人制バレーボールに替わるビーチバレーの正式種目化である(現在は公開競技)。ビーチバレーが国体の正式種目となれば、各都道府県にコートが常設され、コーチも配属されるなど環境面の強化が期待できる。『SLAM DUNK』ブームが来る前から小学校にはバスケットボールのゴールが常備されていたし、2012年度からの中学校における武道とダンスの必修化が当該スポーツ市場を活性化しつつある。このようにスポーツ振興は、行政からの支援が不可欠な分野であるため、今後は政策面での研究も課題の一つとしたい。

※1 2月調査は16歳から40歳までを、9月調査は19歳から49歳までをそれぞれ調査対象とした。
※2 質問文は「実際にお子様がいらっしゃるかどうかに関わらず、小さなお子様がいらっしゃることを想定してお答えください。ご自身の子どもに、やってほしいスポーツはありますか?「男の子」「女の子」の場合について、それぞれ5つ以内でチェックしてください」であり、79種目を用意した。なお「本人の意思に任せる」「やってほしいスポーツはない」の回答者は除いて集計した。
※3「女の子にサッカーをさせたい」という回答の特化係数(一般回答者の何倍の回答率か)は、20代男性においては中学サッカー部所属者で4.7倍、高校サッカー部所属者で6.7倍、現在サッカーをしている回答者で6.5倍であった。30代男性においては中学サッカー部所属者で3.5倍、高校サッカー部所属者で5.8倍、現在サッカーをしている回答者で8.4倍、現在フットサルをしている回答者で6.1倍などであった。
※4サッカー経験者の定義は、【幼少・学生期の運動クラブへの所属】質問において、幼児期・小学校低学年・小学校中学年・小学校高学年・中学・高校のいずれかで「サッカー」を選択、あるいは【現在行っているスポーツ】質問において「サッカー」を選択した回答者である。
※5スポーツ関連のメディアコンテンツはインターネットの利点を活かし、情報バラエティ番組85件、海外映画142件、ドラマ/邦画137件、漫画/アニメ615件、テレビゲーム287件の合計1,266件という厖大なアイテムリストを作成して調査を実施した。

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