産業能率大学 スポーツマネジメント研究所

ケーブルテレビによるスポーツ報道 

湘南ベルマーレJ1昇格!

murakami.JPG 授業の初めには、湘南ベルマーレの昇格決定シーンから報告会の様子までをまとめた放送VTRが流された。番組で司会を担当していた村上氏であったが、水戸で湘南ベルマーレの昇格を見届けた後、途中の高速道路では雨と行楽帰りの自動車による渋滞にはまり、万が一のことを考え代役を頼んでおいたものの、「報告会に間に合わないかもしれない...」という不安が脳裏をかすめたとのこと。その後、機転を利かし東京駅付近で車を乗り捨てた村上氏はJRにて平塚へと向かい、平塚駅からタクシーに飛び乗り、午後8時30分から始まる報告会の会場に着いたのは開始数分前であったそうだ。
 感激に浸る選手、スタッフそしてサポーターの絵が次々に映し出されるが、「この1時間番組を、急遽、ぶち抜きで放送できることが地域密着のケーブルテレビの持ち味なのです」と村上氏は語る。  
 湘南ケーブルネットワーク(SCN)では、開局以来、地域のための地域のチャンネルを実現するために、湘南ベルマーレを取り上げ続けてきている。したがって、視聴者からすれば、1時間生放送ぶち抜きの番組が放送されても当然だと感じるのかもしれない。しかし、ケーブルテレビといえ、番組の編成は綿密に組まれており、急遽予定を変更して1時間の番組を入れるためには、かなりの調整が必要であった。そんな中、円滑に調整が進められたのは、番組を制作して放送する送り手と(その時放送される予定であった)情報の提供者とが顔の見える関係であり、さらには地元を大切に思っている人々であるので、湘南ベルマーレの昇格がどれほど価値ある話題なのかを分かってくれたという点が大きかった。

ケーブルテレビによるスポーツ報道

murakami (1).JPG SCNでは、地域の話題として、地域の少年野球大会や少年サッカー大会などの模様を放送する。そして、かつては湘南ベルマーレの試合も放送していた。ところが、近年では、「湘南ケーブルさんではなぜベルマーレの試合を放送しないのですか」という声が聞かれるほど放送しなくなっている。
 Jリーグの試合を放送するためには、「株式会社Jリーグメディアプロモーション」に申請し承認されることが必要であるが、そこにはいくつかの制約が存在す る。それは、Jリーグの全試合の放送権を持つ、スカパーJSAT株式会社(以下スカパー)の権利を最大限にするためのものでもある。例えば、シーズンの日程が発表され、SCNが放送したい試合の申請を行うと、まずJリーグ側とスカパーとで協議が行われ、その上で、スカパー側に放送予定がないとしても、放送 できる優先順位は、NHK、民放キー局、ローカル局、次いでケーブル局という序列になっている。さらに、放送可否の決定は3月のシーズン開幕直前まで待た される。その上で、ケーブル局が放送できるのは地元ホームゲームの3試合に限られ、さらにチームとの資本提携の有無などの条件が加わるなど、放送するまで には、いろいろなことをクリアしなければならない。
 ケーブルテレビでJリーグの試合を放送する為の権利料には、主として試合放送権料と映像使用料がかかる。映像使用料は、基本料金に加え1秒当たり250円 が課金され(地上波では1500円)、再放送にもさらに課金がされるシステムとなっている。映像使用料は、映像を自社で制作しても、他社の映像を使用して も掛るものであるが、小さなケーブルテレビ局にとっては想像以上に重荷となるようだ。自社制作した場合には、製作費も掛ってくるためなおさらである。

murakami (2).JPG  村上氏は過去に、「Jリーグ百年構想により地域密着を謳いながら、地域を最も意識しているケーブルテレビを蔑にするのはなぜか」という質問をJリーグにし たことがあるそうだが、その答えは極めてビジネスライクであったそうだ。しかし、村上氏はケーブルテレビの生命線は地域密着にあるという信念を捨てずに、 様々な制約の中、SCNにしかできない湘南ベルマーレの情報番組である「Go! Go! ベルマーレ」の制作に今も取り組んでいる。
 授業の終わりに、村上氏が好きだという、入学式で本学最高顧問の上野一郎先生がいつも新入生に語りかける「ここだからできることを大切に」という言葉を改 めて学生に投げかけた(村上氏には本学入学式の司会者をお願いしている)。そしてその言葉は、「ケーブル局だからこそできる放送を突き詰めたい」という思 いを持ち、この仕事に真摯に取り組む村上氏の姿勢と重ね合わせることのできるように感じられた。

中川直樹